- 真空管の交換時期ってどうやって見きわめるのか知りたい
- 真空管を長持ちさせる方法ってあるの?
- メンテナンス方法や交換するときの注意点が知りたい
真空管の交換時期の見極めは「目に見える変化」や「音質の劣化」「測定器による寿命の数値化」など様々です。
記事前半では、真空管の交換時期の見極め方を紹介しつつ、記事の後半では真空管を交換する注意点を紹介しています。
この記事を書いている僕は真空管アンプの使用歴が5年以上。真空管の総保有数が100本ほどです。
現在は、WOO AUDIO「WA22」「WA8」という100%真空管サウンドを楽しめるアンプを使い、音楽を楽しんでいます。
真空管の交換時期を見極める4つのこと
真空管の交換時期を見極めるべきポイントは次のとおりです。
真空管は消耗品のため、電球のようにいつかは寿命を迎えます。
交換時期を見極めつつ、真空管の音色を楽しみましょう。
真空管のゲッターが薄くなっている
真空管の内部には不純物を吸着し、真空度を維持するための「ゲッター」といわれる膜が散布されています。
ゲッター膜は、基本的に管内の上下(ない場合もある)のどちらかに塗布されており、銀色やクローム色なのが特徴。
真空管の「真空度」が低くなるとゲッターの面積は少なくなります。
②音(左右chの音圧バランス)に違和感がある
真空管アンプで音楽を聴いていると、異音や音圧差を感じませんか?
左右chに音圧差があり、違和感がある場合は真空管の特性が揃っていない可能性があります。
左右どちらかが寿命に近いと、內部特性のバランスが取れていないため音圧差が出ることも。
真空管を購入する際は、必ず精密測定された珠を選びましょう。
真空管から異音が鳴る
真空管の内部からカラカラ音がする場合や、再生中に「ヴーン・ピー」などの異音が鳴ることがあります。
アンプの不具合やハム音の可能性もありますが、ここでは真空管の原因を考えてみましょう。
- 経年劣化で内部が破損している
- 內部でショートし、異音が出ている
- 內部パーツや配線が破損しかかっている
管内異物、管内ショートは対処法がありません。真空管を開けることができないからです。
特に「內部でショートし、異音が出ている」はアンプを壊しかねませんので注意しましょう。
內部でショートしている真空管を使うと、アンプの電源を入れた瞬間に内部でスパークすることがあります。
ショートしている真空管は使用不可能ですので、すぐに電源を切って破棄しましょう。
アンプを壊すリスク高いため、注意が必要です!
④內部に白いチリが見える
真空管の真空が抜けてきた、あるいは寿命が来ているサインの1つに「白いチリ」が管内に確認できます。
中古球やヒビ割れた真空管で見られる現象なので確認してみましょう。
すぐに寿命を迎えるわけではないですが、いずれゲッター部分が白くなります。
真空管の良いパフォーマンスは期待できなため、新しい真空管の交換をおすすめします!
真空が抜けた真空管は破棄しよう
ゲッター面が白く濁った真空管は使えませんので注意点しましょう。
上記の画像は、真空が抜けて白くなった真空管です。
- 原因①:真空管の寿命を迎えた
- 原因②:ヒビ割れなどで真空が抜けた
- 原因③:適性電圧を超えて使い続けた
真空が抜ける原因は上記のとおりです。
とはいえ、必ずしも「ゲッターの面積が少ないから寿命が短い」と言われればそんなことはありません。
古い「ビンテージ真空管」の中には、新品の状態であってもゲッターの散布量が少ない球もあります。
真空管マニアの界隈では有名な「Western Electric」を見てみましょう。
1953年製 Western Electric 421A。 1940~50年代初期は、ゲッター面積がかなり少ない珠を確認できます。
上記のことから、必ずしもゲッターのみでは「寿命を図れない」のが確認できます。
つまり、ゲッターの面積については、一概に寿命と紐づくわけではありません。
真空管の寿命について
一般的に真空管の寿命は5,000時間と言われています。
一気に使えなくなるわけではなく、電子放射能力が半分になる時点が5000時間で実際はもっと使えます。
真空管のタイプによって寿命は違っており、詳しくは下記をご覧ください。
- 電力増幅管(出力管):5000時間
- 電圧増幅管(ドライバー管):10000時間
- 整流管:1000~2000時間
真空管の寿命は使用時間で大きく変わるため、上記のとおりになるとは限りません。とくに、常に全開で動作している整流管は短命となります。
さらに、年単位で見ると
- 電力増幅管(出力管):7年
- 電圧増幅管(ドライバー管):14年
- 整流管:1~3年
となます。
ちなみに、真空管には軍用管とよばれる規格があり、民生管よりも耐久性があり長寿命です。
真空管の規格でも、寿命の違いがあるため、あくまで目安の1つと考えましょう。
結論:真空管を交換しながら楽しもう
真空管の寿命を延ばすためには、スペアの球と交換しながら楽しみましょう。
特に、整流管と出力管はスペアがほしいところ。
真空管を入れ替えつつ、各真空管の音色を聴くのも格別ですよ。製造国や年式によって音が絶妙に変わるからです。
真空管の音色については「【真空管の交換】音が変わる3つの理由【100本交換した結果】」で深堀りをしているので、真空管の音質差が気になる方は必須です。
真空管を長持ちさせるためのメンテナンス法とは
結論、真空管そのものにできるメンテナンス法はほぼありません。
あるとしたら、真空管の足ピン部分を紙やすりで磨いて、ノイズの発生リスクを下げるくらいでしょうか。
または、ガラスについた「手垢」や「ホコリ」などを軽くふき取る程度です。
落下や衝撃に注意すれば、取り扱いは問題ありません。
真空管は開封ができないため、管内異物もそのままとなります。
適正な電圧を真空管にかけよう
真空管のメンテナンス方法は少ないです。しかし、日頃から心がけるべき「メンテナンス以上に大切なこと」があります。
それは、真空管に「適正な電圧をかけること」です。
「ヒーター電圧」が上がりすぎると、真空管の寿命が短くなります。
解決方法:アンプの適正電圧をしっかり厳守する
具体的な解決方法は「テスターを使い、真空管アンプの適切電圧を測定する」です。
僕は普段、WOO AUDIO WA22を使っており、適性電圧は115vです。電源を入れる前にテスターにて必ず電圧チェックをしています。
真空管を交換する際に気を付けるべき3つの注意点
最後に真空管を交換する際の注意点をまとめて本記事を終えようと思います。
上記の3つとなります。具体的に1つずつ見ていきましょう。
アンプの電源ケーブルを外す
真空管アンプの種類にもよりますが、とくにアンプ内部の真空管を交換する際は注意しましょう。
といのも、アンプのコンデンサー等に高電圧がかかっている可能性があるからです。
內部から真空管を交換する場合は、感電の危険性があります。 必ず電源を切り、大元の電源ケーブルを外した後に交換すると安心です。
WOO AUDIO WA22のような、アンプの外側に真空管を搭載するタイプなら問題ありません。
真空管を交換するときは、ゴム手袋をするか、メーカーのサポートに依頼することを強くおすすめします!
真空管の熱を完全に冷まして交換する
真空管は、稼働すると高熱を発します。
電源を切っても、しばらくは手で触れられないくらい熱いです。
火傷防止のためにも、ある程度時間を置いてから真空管の交換をしましょう。
真空管の抜き差しは真っすぐ力を抜いてゆっくり行う
真空管の抜き挿しは、つい力が入りがちです。
無理な力を加えて真空管の抜き差しをすると、真空管の足ピンを曲げたり、ガラス部分とソケットの接着が外れる可能性があります。
なので、まっすぐ引き抜きつつ、ゆっくり交換をしましょう。
アンプの真空管ソケットや変換ソケットってわりと硬いですよね……。
どうしても外れない場合は、軽く揺さぶりながら引き抜くと外れやすくなりますよ。
なお、真空管の交換に関しては、真空管の交換方法【簡単な3つの手順】にて網羅していますので参考までにぜひご覧ください。
コメント