- 真空管の交換で音が変わるって本当……?
- いろんな種類の真空管があるけど音に違いはある?
- 音の変化があるなら、具体的な音の特徴を知りたい!
真空管アンプの醍醐味は「真空管の交換」だと思います。とくにビンテージ管は、当時たくさんのメーカーが存在しており、同じ名称の真空管だけでも数種類あるほど。
結論からいうと、製造国や年式でサウンドが微妙にサウンド変わります!
記事前半では「真空管の音が変わる理由」を、記事後半では「真空管の音が具体的にどう変化するのか」を紹介します。
この記事を書いている僕は真空管アンプの使用歴が5年以上。真空管の総保有数が100本ほどです。
現在はWOO AUDIO「WA22」「WA8」という100%真空管サウンドを楽しめるアンプを使い、楽しんでいます。
【真空管の交換】音が変わる3つの理由
結論から言うと、真空管を交換することで音は変わります。
真空管の全盛期につくられた「ビンテージ管」はその傾向が強いです。
音が変わる理由としては次のとおりです。
それぞれ1つずつ詳しく見ていきましょう。
製造国(工場)や製造年式による真空管の個体差
ビンテージ真空管は、製造国(工場)や製造年式で音が微妙に変わってきます。
同じメーカーの真空管でも「別工場」で作られていたり、年代によっては「内部構造」が変更されているからです。
たとえば「Sonotone」というアメリカの真空管メーカーがあります。
真空管ラベルを見ると「Made in USA」のほかに「Made in Holland」、「Made in England」、「Made in Germany」などの表示が見て取れます。
上記写真は、アメリカ本国で作られた「5Y3G」真空管。
同じSonotoneでも上記は英国「Mullard」製造の5AR4(GZ34)真空管。
つまり、アメリカの自社工場だけではなく、他社メーカーの真空管を採用していたのが確認できます。
真空管のロゴやパッケージはSonotoneでも、中身は他社の真空管と言えます。
他社製の真空管ということは、その時点で出てくる音にも違いが出てくるんです!
②各国のメーカーが有する技術力の差
メーカーの技術力も関係してきます。
真空管の製造方法はメーカーによって違うため、音質に影響しています。
上記はBendix 6080とgec6080真空管の比較動画です。
- マイカ板が3倍近くブ厚い
- ガッチリした耐久性の高い造り
- サポートピンの補強がまるで違う
- プレート素材がカーボングラファイト
- ゲッターが通常より多く散布されている
- 鳴らした際、ハム音やノイズが全くない
内部構造だけで、上記の違いがあります。
一般的なつくりのgec6080に対し、Bendix6080は全体的な強度の向上を加え、ノイズを感じさせない「静粛性」は音質面への影響が大きいです。
③真空管の使用目的で作りが変わるから
技術面を深掘りすると、真空管には「民生用」と「軍用」があります。
民生用の真空管は一般でも入手可能なため、主にラジオ等に使用されていました。
球数も多く、現在でも入手が容易です。
軍用目的につくられた真空管を軍用管と呼びます。
軍の要求・用途に合わせて設計がされており、振動対策・衝撃対策・長寿命対策が施されていました。
強化パーツを組み込んだ、強化型の真空管といったイメージです。入手が困難になってきました。
強化パーツだけで音が変わりませんが、民生用の真空管より振動や衝撃に強いです。
つまり、経年劣化によるノイズが出づらい特徴をもちます。
わずかな違いですが、ノイズの有無は音質を大きく左右します!
OEM真空管はわりと多い
真空管はすべて自社工場で作るわけではなく、多くのメーカーはOEMを行っていました。
相互OEMの例
- ①Amperex,Mullard,Valvo,Brimar(Philips傘下のメーカーどうしで供給していた)
- ②Raytheon,松下,Tomson,CSF
有名どころのRCA,GE,Sonotone,Westinghoseも相互OEMをしていたようです。
競合間でもOEMが行われていたようで面白ですね。
くわしい詳細は不明ですが、数多くのメーカーがOEMをしていたのは事実です。
真空管の性能によって音が変わる理由
基本的に、メーカーが違っても「同じ名称の真空管」であれば、出てきた音に大きな違いは感じません。
たとえば、6111という名称の真空管なら、他社であっても規格が同じなので大差はないです。
とはいえWOO AUDIO WA22で使用する、出力管6AS7GとWestern Electric WE421A(どちらも互換球)では、まるで別次元のサウンド差があります。
製造方法や使用目的が大きく変わると、同じ名称の真空管でも音質変化を体感できます。
高信頼管
基本的に音は変わりませんが、その中には「高信頼管」と呼ばれる真空管があり、音の変化を感じます。
- RCA→Premium
- GE→5STAR
- Sylvania→Gold brand
真空管マニアには有名どころのメーカーです。
上記の3社は軍に採用されるため、しのぎを削って高信頼管を生み出していました。
僕個人の所感ですが、中でもGE「5STAR管」は格別です。
GE(General Electric) 5STAR真空管
パッケージと真空管に”5つ星”の印刷がされていますが、それが5STAR管の証。
5STARはGE真空管の最上級グレードのことです。
専用ラインで、限られた熟練工が高品質パーツでくみ上げたという記録が残っています。
厳しい検査にパスしたものだけに「5STAR」の称号が与えられました。
当時の価格も5STAR管は非常に高価だったそうです。
軍用管と高信頼管について
軍用管・高信頼管はそれぞれで少し意味合いが違います。
軍用管と高信頼管のちがい
- 軍用管→振動や長寿命対策など軍の要望にあわせて作られた
- 高信頼管→1950~1960年代頃に激化した真空管メーカーどうしの競争で誕生した
両者ともに最高ランクの真空管と言えます。
真空管の音を3つのメーカーで紹介
ここまでは真空管の性能面について紹介をしてきました。
僕は普段、WOO AUDIO WA22というヘッドホンアンプでビンテージ真空管を楽しんでいます。
聴いていく中で、とくに高音質に感じた真空管メーカーは下記をご覧ください。
音が良かった真空管メーカー3選
上記3社はズバ抜けていると感じました。(※ WOO AUDIO WA22を基準にしています。)
M.O.Valve社(Marconi-Osram Valve Co. Ltd.)
ヨーロッパの真空管ブランドです。
g.e.c・Osram・Marconiの各ブランド名のパッケージはマニアの中でも大変人気です。
ヨーロッパ球らしく、パッケージのデザインや「真空管の美しさ」にまで個性がこめられた数少ないメーカー。
そのサウンドは美音傾向で、甘く切ないヴォーカル域が響きわたります。
現代的なHI-FIな鳴りではなく、音楽性豊かでリアルなサウンドを奏でます。
Bendix
知る人ぞ知る、超ハイスペックなアメリカの真空管メーカー。
情報自体が少なく、真空管の貴重性も非常に高いです。
というのも、Bendixは民生用真空管をつくらず、軍用に特化した真空管を製造していたようです。
ノイズというノイズをまったく発しません。静粛性が高く、出てくる音は厚みがありパワフルです!
一見、普通の真空管のように見えますが内部構造が特殊なんです。
マイカの厚み、サポートピンの太さ、ゲッターの散布量。
どれをとっても普通の6080とは明らかに違います。
Western Electric
三極管・300Bで有名な、多くの真空管マニアが愛するWestern Electric。
世界一高音質な真空管となります。
Western Electricは真空管の最終形態かつ、直進性が非常に高い真空管だからです。
どんな真空管も、音質だけならWestern Electricには勝てません。
その音質は、一聴してすぐ気づくレベルです!
ビンテージ真空管は入手困難
とはいえ、上記3つのメーカーは入手が困難です。
Western Electricは市場に溢れていますが、音が良い1940~1960年代の球はかなり減ってきました。
なお、ビンテージ真空管を入手する際は、真空管試験機などで測定されたものを選ぶ必要があります。
真空管を測定する理由については「真空管の交換時期を見極める4つのこと【寿命についても解説】」で深堀りしていますので是非ご覧ください。
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