音楽をいつまでも聴いていたい。
そんなヘッドホンがあるなら、それはきっとfinal DX6000かもしれません。

過剰な味付けも、派手な音作りもない。

ただ、音楽本来の豊かさを静かに、けれど力強く伝えてくれる存在です!

- 標準機として長く使える
- 装着感がとても軽い
- 側圧が程良く痛くならない
- 滑らかな高域で低音の量感も十分ある
- ホールライクな生音場が聴ける
- 価格以上の音楽体験ができる
- 味気なく聴こえる可能性あり
- 鳴らし切るにはアンプの駆動力が必要
- Dシリーズのケーブルが使えない

本記事では、final DX6000の実機を使った音質レビューに加え、平面磁界型の「D8000 DC Pro Edition」や「FOCAL UTOPIA」と音質比較しました。
final DX6000の概要

final DX6000の概要は以下のとおりです。
項目 | 仕様 |
---|---|
製品名 | final DX6000![]() |
筐体素材 | アルミマグネシウム合金(精密切削加工) |
ドライバー | ダイナミック型(マグネシウム振動板+発泡シリコンエッジ) |
ドライバー方式 | トランジェントコイルシステム搭載 |
感度 | 83dB/mW |
インピーダンス | 47Ω(1kHz時) ※20kHzでは480Ωまで上昇 |
質量 | 約363g(ケーブル除く) |
イヤーパッド・ヘッドバンド素材 | 和紙を使用した特殊生地+発泡体 |
ヘッドバンド素材 | 和紙生地+高耐久構造 |
ケーブル | OFCスリムケーブル(XLR/3m付属) |
接続端子 | XLR(バランス接続専用) |
付属品 | 着脱式OFCケーブル(XLR/3m)、専用セミハードケース |
価格(税込) | 248,000円 |
DX6000の付属品


- 製品保証書・取扱説明書
- バランス接続対応のOFCスリムケーブル(XLR端子/3m)
- 専用セミハードケーズ
DX6000には、持ち運びや保管時に安心な専用セミハードケースも付属。

日常使いから外出先でのリスニングまで、安心してDX6000を持ち出せます。

また、イヤーパッドは特殊なネジ固定式のため、交換時はメーカーサポートが必要ですが、その分、密着感と安定した音質を長期間維持できる設計になっています。

final DX6000を徹底レビュー!D8000 DC Pro Editionと比較

final DX6000と同社のD8000 DC Pro Editionを比較しました。
ハウジング構造やケーブル仕様といったポイントを中心に、違いをくわしく掘り下げていきます。
開口部が多いハウジング構造
DX6000最大の特徴のひとつが、開放感を極限まで追求したハウジングデザインです。
中のドライバーがほぼ宙に浮いており、振動板の前後も通気性を確保。

非常に開放感を実現したサウンドで、低域もしっかり鳴らせるのが魅力。
一方、D8000 DC Pro Editionも開口率を大幅に向上させた設計です。

ウォーム寄りな音の広がりを求めるならDX6000、精密な空間描写を求めるならD8000 DC Pro Editionが向いています。
和紙を使用した特殊生地イヤーパッド
イヤーパッドには、finalが新たに開発した特殊生地を採用。

表面素材に和紙を用いることで、ドライな触り心地と高い耐久性を両立。
通気性にも優れ、ハウジングの開放感を最大限に活かす役割を果たしています。
両機ともに同じ材質、厚みのイヤーパッドになり、快適なリスニングを得られます。

本体重量と装着感
モデル名 | 本体重量 | 装着感の特徴 |
---|---|---|
DX6000![]() | 約363g(ケーブル除く) |
|
D8000 DC Pro Edition![]() | 約431g |
|
DX6000の重量は約363g。
DC Pro Editionより68g軽いです。
装着した瞬間にその快適さを実感でき、軽さに加え、ヘッドバンドやイヤーパッドの設計も絶妙なバランス。


長時間リスニングでも疲れを感じにくいのが特徴です。
一方、D8000 DC Pro Editionは若干重量感があり、長時間使用していると首が疲れることも。
リラックスして聴きたいなら、DX6000の軽るさは大きな魅力となるでしょう。
ケーブルと端子仕様の違い
DX6000には、専用設計されたOFC(無酸素銅)スリムケーブルが付属。

端子はXLR仕様で、バランス接続によりノイズを抑え、広大な音場を最大限に引き出します。


ケーブルの取り回しは軽やかで、線径も約8mmと太く、信号をダイレクトに伝達。
D8000 DC Pro Editionは独自のロッキング機構が備わっており、対してDX6000は通常の3.5mm2極となります。



final DX6000の音質を徹底レビュー!実機を使ってみた感想

final DX6000の実機を使ってみた感想、音質レビューは以下のとおりです。
素直でさっぱり目だが聴くほど味が出る
DX6000の第一印象は、非常に素直でクセのない音作りだということ。
派手な味付けはほとんどなく、音楽そのものをストレートに届けてくれる感覚があります。

ただ、何度も聴くうちに、細やかなニュアンスや表現力の深さがじわじわと伝わってきて、飽きが来ない作り込みの巧さを実感できます。
一聴してインパクトを求めるタイプではありませんが、音楽とじっくり向き合いたい人には、この「聴くほどに味が出る」特性は大きな魅力になるはずです。
様々な音が自然に耳に届いてくる
DX6000は、空間のどこからともなく自然に音が広がってくるような聴こえ方をします。
特定の楽器だけが際立つわけではなく、あらゆる音が均等に、ナチュラルに耳へ届くのが特徴です。

フリーエア構造と和紙イヤーパッドの効果が見事に噛み合った結果でしょう。
室内に自然と音が満ちていくようなリスニング体験は、アコースティック系やクラシック音源で真価を発揮しました。
音が一体となって響き渡る
多くのヘッドホンでは、音が個別に分離して聴こえる傾向がありますが、DX6000は逆。
音がまるでひとつの「塊」となり、空間全体に響き渡るような印象を受けます。
この一体感が、単なる高解像度とは一線を画す「音楽としてのまとまり」を生み出しており、長時間聴いても疲れにくいと感じる要素になっています。
低域の豊かな量感が芳醇に響く
低音の表現力もDX6000の大きな魅力。
単に量感が豊富なだけではなく、音の輪郭を保ちながら、ふくよかで芳醇な響きを聴かせてくれます。

ベースラインやドラムスのキックが、空間の中で自然に広がりながらも、芯を持って存在している感覚。
低域の鳴り方に立体感があるため、ジャンルを問わず音楽を豊かに彩ってくれます。
中高域は厚みがあり滑らか
中域から高域にかけては、控えめな派手さながらも、しっかりと厚みを持った表現が良いです。
ボーカルラインには密度感があり、感情の細やかな動きまでリアルに伝わってきます。
高域はキラキラと華やかに鳴るタイプではありませんが、滑らかで耳あたりが良く、長時間聴いていても刺さることがありません。
全体的に非常に丁寧にチューニングされた、上質な中高域です。
ウォームに広がるホールライクな生音場
最も印象的だったのは、音場の「暖かさ」です。
DX6000はただ広いだけの音場ではなく、温かみのある、生きた空間を感じさせるサウンドステージを作り上げています。

まるで小さなコンサートホールで演奏を聴いているかのような、音に包まれる心地よさ。
この自然な空気感とリアルな音の広がりは、ほかのヘッドホンではなかなか得がたい体験といえるでしょう。


final DX6000とFOCAL UTOPIAを比較!どちらが良い?

final DX6000と、開放型のトップに君臨する「FOCAL UTOPIA」を実機にて比較しました。

SGではなく、高中域が煌めく初代UTOPIAをチョイス!
音量の取りやすさと開放感
DX6000は能率83dBと低め。
試聴には真空管アンプ「Woo Audio WA22」を使用しましたが、ボリューム位置が11時の位置。
一方、FOCAL UTOPIAは能率104dBと高く、比較的少ない出力でも余裕を持って鳴らせるため、9時の位置で十分な音量。

駆動面では「UTOPIA」に軍配が上がりました!
開放感については、DX6000がフリーエア構造による自然な広がりを持ち、まるで空間そのものが鳴っているかのような感覚を生み出します。
対してUTOPIAは、開放型でありながら音像を手前に引き寄せ、よりダイレクトなリスニング体験が得られます。
スピーカーライクな鳴り方
DX6000は、耳元で音が鳴っている感覚を極力排除し、ホールで聴いてるような「空間に音が広がる鳴り方」が特徴。
独特の残響感があり、生々しい鳴り方を体感できます。

FOCAL UTOPIAもまた空間表現には優れていますが、より音の輪郭がシャープでエッジ感のある描写が特徴。
精緻な音像表現と高解像な中高音域。

まるでスピーカーを耳元で聴いているかのような体験をUTOPIAでは味わえます。
低域の深みとダンピング感
DX6000の低域は、量感がありながらもふわっと自然に広がる傾向にあります。
締まり具合はやや柔らかめですが、芳醇な響きを持ち、ベースやドラムのグルーブ感を豊かに味わえます。

一方、FOCAL UTOPIAは低域の制動が非常に優れており、ダンピング感(制御力)が高いです。
低音が膨らまず、スピーディかつキレのある表現を得意としており、アタック感を求めるリスナーには魅力的に映るでしょう。
音場の広がりと立体的な定位
音場の広がりに関しては、DX6000がより自然な空間展開を実現しています。
左右だけでなく、奥行きや高さの感覚まで豊かに感じられるため、まるで小ホールで聴いているかのような臨場感を味わえます。

FOCAL UTOPIAも広い音場を持ちますが、定位感重視のチューニングが施されているため、楽器の位置関係が非常にシャープに把握できるのが特長。
立体感を楽しみたいならDX6000、正確な定位を求めるならUTOPIA、という選択になるでしょう。
高域の透明感と中域の厚み
高域に関しては、FOCAL UTOPIAがより煌びやかでクリアな表現を得意としています。
シンバルやストリングスが抜けよく伸びる印象です。

対してDX6000は、高域の煌びやかさは控えめで、その代わり耳あたりの良さと長時間リスニングに適した落ち着きを持っています。
中域はどちらも厚みがありますが、DX6000はよりウォームで、ボーカルの温度感を丁寧に描き出す仕上がりとなっています。

final DX6000を鳴らし切るコツ

final DX6000を鳴らし切るコツは以下のとおりです。
ヘッドホンアンプに繋ぐ
DX6000は能率83dBというスペック上、やや鳴らしにくい部類に入ります。
ポータブル環境でも鳴らすことは可能ですが、真の実力を引き出すには、据え置き型のヘッドホンアンプと組み合わせるのがおすすめ。

バランス出力に対応したアンプを使えば、音場の広がりや低域の深みがより一層引き立ちます。
余裕のある駆動力が、DX6000の豊かな音場と立体感を最大限に生かしてくれるでしょう。
リケーブルはしない
一般的なハイエンドヘッドホンでは、ケーブル交換による音質向上を狙うこともありますが、DX6000に関しては、純正ケーブルとのマッチングが非常に緻密に設計されています。
無理にリケーブルを試みるよりも、まずは付属のOFCスリムケーブル(XLR/3m)でリスニングを楽しむのがベスト。

finalが理想とする音作りを、そのまま感じられるはずです。
高音質音源で空間描写を極める
DX6000の真骨頂は、広大で自然な音場表現にあります。
この特性を存分に味わうために、ハイレゾ音源や高品位なマスタリングが施された音源を選んでみてください。
細かな空間情報や余韻成分までしっかり再現できるので、ライブ録音やアコースティック系の楽曲では違いを体感しやすくなりますよ。

final DX6000はどんな人におすすめ?
final DX6000はどんな人におすすめなのか、具体的なイメージを挙げながら紹介します。
ホール感ある生の音場を求める人
DX6000最大の特長である「自然な空間表現」は、まるで小ホールやライブ会場で音楽を聴いているような臨場感を味わいたい人にぴったり。

解像度や透明感のある空間ではないものの、特有の残響感と空間表現が魅力。
クラシック、ジャズ、アコースティックなど、空間の響きを大切にしたジャンルでその真価を発揮してくれるでしょう。
長く使える基準となるヘッドホンがほしい人
DX6000は、目立った個性はありませんが、聴き込むほどに味わいが深まる設計になっています。
トレンドに左右されない普遍的なサウンドバランスと、頑丈なビルドクオリティを兼ね備えているため、長く愛用できる一台を探している人におすすめ。
初めてのハイエンドヘッドホン選びで迷っているなら、DX6000を「基準」として据えるのも大いにアリだといえるでしょう。
妥協なき設計思想とクオリティを味わいたい人
発泡シリコンエッジ、マグネシウム合金振動板、フリーエア構造など、DX6000にはfinalの技術的なこだわりが凝縮されています。

「細部まで考え抜かれた作り」を肌で感じたい人には、たまらない満足感をもたらしてくれるはず。
単なる音質の良さではなく、設計思想そのものに共感できる製品を求めるなら、DX6000は間違いなく候補に入れるべき一台です。

final DX6000レビューまとめ

final DX6000は、自然な音場感、耳に優しい装着感、長時間聴いても疲れない絶妙なサウンドバランス。
そのどれもが、高い完成度でまとまっています。
派手さや一聴してのインパクトを求める人にはやや地味に感じるかもしれませんが、じっくりと聴き込むほどに、このヘッドホンの底知れぬ魅力が浮かび上がってきます。
据え置き型アンプとの組み合わせで真価を発揮し、高音質音源を存分に楽しめる環境が整えば、DX6000はきっと音楽体験そのものを豊かにしてくれるでしょう。


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